Slliy dialogue 6
体当たりするような勢いで、寮の扉を開ける
息を切らせながら見渡したリビングには・・・アイギスがソファに座っていた
「は・・・アイ、ギス・・・じゅ「伝言があるであります」
「・・・伝言?」
「順平さんから、真田さんへ伝言であります」
「!!・・・順平が・・・な、何て言ってたんだ?」
「『言いふらしてんじゃねぇよ、クソが・・・』であります」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
どうやら、他の奴らに相談したのがばれたらしい・・・慰めの言葉でもかけられたのだろうか・・・
アイギスに伝言を言っている順平の怒りの表情が楽に想像できる・・・頭の血がさあっと引いていく
失敗した、あいつら・・・まさに泣きっ面に蜂・・・・・・だが、これも自業自得か・・・
とりあえず今は順平に会って、誤解を解くのが最優先だ
「ア・・・アイギス、順平がどこに居るのか、知らないか?」
「順平さんでありますか。先ほどの伝言を私に預けた後、階段を上がっていかれたので恐らくは自室にいるかと思われるであります
私はずっとここにいましたので、少なくとも寮内にいるであります。」
「わかった、ありがとう!」
言い終わるのが先か、ラウンジを飛び出し階段を2段飛ばしで駆け上がる
順平の部屋の前に立ち、呼吸を整えると扉をノックする
「順平、俺だ開けてくれ」
扉の向こうで何か物音がした、中に・・・いる!
先ほどよりも強めに扉を叩く
「怒っているのは分かっている、話を聞いてくれ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「今日はお前に会うまでは引かん・・・頼むから顔を見せてくれないか・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・わかった・・・・・・扉の近くにいるなら・・・離れていろ」
どうしても開けないというのなら、実力行使だ。扉をぶち破る!
寮の扉は特殊な造りで、強度もかなりのものだと知っている・・・だが、ペルソナを使えば鍵くらい壊せる筈だ
後で美鶴に何と言われようが、処刑されようが、知ったことか!!!
意識を集中し、ポリデュークスを召還・・・しようとした刹那、カチリと小さな音がして扉が開く
内心、少しほっとしてしまった。外に出てこないところを見ると、入って来いということらしい
中に入ると直ぐに扉を閉めた、順平は・・・ベッドに座って俯いていた
帽子のせいで表情はよく見えないが、口元は固く引き結ばれている
俺は順平の隣に少し間隔を空けて腰掛けた
「順平・・・今回の件は本当にすまなかった・・・お前に嫌な思いをさせたな・・・
だが、信じてくれ・・・俺は決してそんなつもりで聞いたんじゃないんだ」
順平を横目で伺いながら言葉を続けるが、順平は何の反応も見せない
その無言・無反応が更に焦りを生む
「誤解を招くような言い方をしたのは謝る・・・だが、俺はお前の愛情を疑ったわけじゃないんだ・・・
俺はただ・・・お前の言葉が欲しかったんだ・・・お前の口から、俺が好きだと・・・言って欲しかっただけなんだ!」
目深にかぶった帽子の奥からは感情が読み取れない・・・何も言葉を発することなく、未だ沈黙を保ち続けている
「頼むから・・・何とかいってくれ!!順平っ!!」
長い沈黙に耐え切れなくなり、肩を掴んで無理矢理こちらを向かせる
「ッッ・・・・・・!!」
「・・・・・・じゅん・・・ぺい?」
跳ね除けた帽子の下から現れたのは
目の下の隈、充血した瞳、疲弊と動揺を浮かべる表情・・・・・・そこにあったのは、怒り俺を責める順平の顔ではなかった
「順平・・・どうしたんだ、その顔・・・・・・」
見せまいと顔を隠そうとする両腕を反射的に捕まえ、引き寄せる
嫌がって暴れるも全く力が入っていないようで、数日前からは信じられないくらい疲労困憊の様子だった
弱りきってしまった順平を思わず抱きしめた
こうなってしまったのは・・・きっと俺のせいだ
「・・・・・・寝てないのか」
肩口に押し当てられた顔が小さくこくりと頷く
「・・・・・・・っ・・・・・・・・・ぃ・・・・だ・・・・・・」
「・・・何だ、どうした?」
消え入りそうな声で順平が何事か囁く
「・・・もぉ・・・やだ・・・・・・・・・全然、眠れないし・・・ヘンな夢みるし・・・寝てても、起きてても・・・
真田サンのことばっか・・・・・・考えないようにしても、できないし・・・・・・・・も・・・疲れ・・・・・・」
手を添えた肩が小さく震える
「夜は寒いし・・・ベッドが広くて・・・寂しくて・・・・・・いやだ・・・やだ・・・・・・・・嫌だ、よ・・・・・・」
駄々をこねる子供のように『嫌だ』と繰り返す、離れていた時間がよっぽど応えたのだろう
その姿が痛々しくて、抱きしめる腕に無意識に力がこもる
いつの間にか俺の背に回されていた両手が、ベストを握り締める
「真田さん・・・じゃない・・・・・・・・・」
「え・・・・・・?」
「嫌われたら・・・生きてけないのは・・・・・・俺のほう・・・真田さんに、嫌われたら・・・・・・・・・おれ、きっと・・・」
「・・・ッ!!!」
しがみ付いていた順平を力任せに引き剥がし、ベッドへと押し倒す
「ふざけるなッ!!!」
部屋が揺れるかと思うほどの怒声に順平の躰がビクッと跳ね、表情に怯えが混じる
しかし、そんなことには構わずに声を荒げる
「俺が・・・お前を、嫌うだと・・・?そんなこと・・・ありえるはずがないだろう!!!
俺には、お前を愛しいと・・・その想いしかないというのに・・・何故・・・どうしてお前はそんなことを言うんだっ!!!」
そこまで言って、はっと気付く
(そうか・・・あの時、お前は・・・・・・・・・こんな、気持ちだったのか・・・・・・
順平は、こんな気持ちのまま2日間も・・・・・・思い悩んでくれていたんだな・・・・・・俺のことを、真剣に・・・・・・)
怒りが消えて、後に残ったのは・・・やはり愛しさだけだった
うっすらと涙に濡れた目じりを指で拭い、頬を優しく包み込んだ
順平も、その仕草に俺が怒っていないのが分かったらしく、不安げな視線を向け、おずおずと言葉を紡ぐ
「・・・・・・・・・真田サンは・・・オレのこと・・・好き?」
「何度も言っているだろう・・・好きだ、俺は・・・お前を愛している・・・」
口元に笑みを浮かべて、答える。それ以外の答えなど、ある筈がないだろう、と。
「・・・・・・・・・じゃあ・・・もう、いいや」
そういって、順平の表情がふにゃりと崩れる。いままで張り詰めていた緊張の糸が一気に緩んだようだ
「やっと・・・笑ってくれたな・・・・・・久しぶりだ」
「真田サンも、ね・・・なんか、たった2日だったのに・・・えらく長い間離れてたような気がする」
「俺がいないと生きていけないと、自覚してくれたんだろう?もういい加減諦めろ、一生離れさせんし、離してやらん」
「うう・・・否定できないのが悔しい・・・さりげなく怖いこと言うし、このヒト・・・」
「事実だからな」
そんな他愛ない会話も、ひどく久しぶりに感じて嬉しかった
順平がはっとして俺の頬の痣に手を伸ばす
「・・・・・・痛い、っすか?」
「そうだな、正直まだ痛い・・・だが、嫌な痛みではない」
「・・・・・・ぇ・・・マゾ?」
「・・・それはお前だろう」
「ゔぇっ!?そんなことn・・・ッ!?」
無駄口を叩こうとする唇を無理矢理塞ぐ
久しぶりの接吻に、躰の芯がじわりと熱くなるのを感じる
口の中の傷がチリッと痛んだが、そんなことよりも今は腕の中の愛しい恋人を愛したかった
少しずつ荒くなる呼吸と、触れた胸の奥で早まる鼓動・・・
自分の愛撫で過敏に反応をみせる順平にますます愛おしさが募る
「っは・・・ぁ・・・・っ真田サン・・・・・・血の味、する・・・」
「・・・・・・すまん、不快だったか?」
「そんなんじゃ・・・ないけどさ・・・・・・真田サンが痛いの、ヤだし・・・」
「平気だ、痛くなんかない・・・だから、キスしていいか?」
「・・・・・・・・・好きにして、いいっすよ」
そう言って優しく微笑み、肩に両腕を回してくる
愛しい 愛しい 愛おしい・・・次から次へと溢れ出てくる感情が少しでも伝わるように・・・
そう想いを込めて、己の唇を深く深く重ねた
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雨降って、地固まる・・・どころかコンクリで舗装されちゃったレベルw
やっぱりなんだかんだいってラブラブに落ち着くわけです(11,02,26)